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明日への一歩

2014年7月26日土曜日

人口減少のなかで活力あるまちづくりを考える

2014年7月24日(木)、25日(金)

於:京都テルサ

主催:NPO法人建設政策研究所 関西支社

第11回地方議員研修会

「人口減少のなかで活力あるまちづくりを考える」 

に出席しました。



 

記念講演「人口減少時代のまちづくり」

中山徹 奈良女子大学 教授

政府の2014骨太方針で「50年後に1億人を維持する」ことを目指している。しかし、出所率2.07(高度成長時代の出生率)が前提条件であるため、極めて厳しい目標である。それでも人口は2割が減るのである。まちづくりの大前提が「人口減少・高齢者が多い」としなければならない。

これまでのまちづくりの基本は、増加する人口、産業をどう受け止めるのか、乱開発の防止がテーマであった。しかし、現状でのまちづくりでは、人口減少に対応する計画が未確立なために、無計画な縮小が発生している。人口が減る時に放置すると、街が衰退する。

海外の事例

①     ドイツのシュリンキング、10年前から減築(集合住宅)を国が制度として開始。建物を計画的に間引いて、公園や高齢者施設に変えている。

②     アメリカ、ヤングスタウンのシュリンキング。市街地を縮小する計画を立てるがうまくいっていない。

③     イギリス・コミュニティフォレスト、かつて失われた自然や歴史を取り戻す。

④     韓国ソウル・清渓川(チョンゲチョン)再生プロジェクト。環境とか文化を高めて優秀な人材を呼んでくる(創造都市)。

ヨーロッパでは公共交通を軸としたまちづくりトランジットモール(LRT)を採用。

まちの格を創るのは、景観・眺望規制が必要。

人口減少時の対応は、空間的な対応は容易であるが、財源的な対応が困難。

①     参入者から徴収することが不可能。EUでは、地域から撤退する企業から財源を確保、撤退者から徴収。

②     社会的に負担、コストを投じても縮小することの方が将来的にコスト減。ドイツのコンパクト化は社会的住宅が多いから。分譲住宅ではほとんど進まない。アメリカでは公的機関が空地の集約化を図りやすい。

検討すべき課題は、都市部での発想と農山村での発想が異なる。農山村の場合、費用面だけで判断すると集落の集約化、さらには都市部への集団移転が望ましいことになってしまう。

 

特別講演「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」

~コンパクトシティ戦略による富山型都市経営の構築~

高森長任(富山市都市整備部 次長)

 

富山市のまちづくりの基本方針「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを実現」施策のポイントは、①公共交通の活性化、②公共交通沿線地区への居住推進、③中心市街地の活性化である。都市マスタープランに、居住推進地区を設定し、土地利用と公共交通を一体的に推進。居住人口の目標を20年後に40%と設定し推進。また、市長が109回のタウンミーティングで市民に直接説明を行った。LRTの整備だけではなく、公共交通の活性化と地域特性に応じた多様な生活交通(コミュニティバス等)の確保。

公共交通の設置運営方針は、公設民営で上下分離を行い、公共交通を維持するものである。

セントラムの整備効果としては、①利用者の70%が女性、②買い物目的の外出機会が増加、③移住にも貢献。

JR高山本線の活性化のために社会実験(市費)で5年間実施し、効果の高いものを事業化している。

幹線バス路線の活性化方針は、イメージリーダー路線を重点整備する。

公共交通沿線地区への居住推進策として、①まちなか居住推進、共同住宅の建設補助(100万円/1戸)、優良賃貸住宅建設補助(20万円/1戸)。②沿線居住推進

中心市街地の活性化では、ハード(基盤整備)とソフト(イベントや仕組み)を実施。おでかけ定期券や、まちなか活性化事業サポート補助金、高齢者支援と地域コミュニティの活性化、孫とおでかけ支援事業を実施。学校跡地に介護予防施設を設けるなどしている。

 

 

2日目講義A「まちが生き残るために」コンパクトシティと魅力の創造

今井晴彦 都市計画コンサルタント ㈱サンプランナーズ 代表取締役



第1講 「人口減少と高齢化はなにをもたらすか」

人口減少は一律ではなく地域格差がおきる。地方都市では2030年に高齢者がピークを迎えるが、3大都市はその後も継続して増加する。そしてその、しわ寄せは地方都市にもたらされる。高齢者の独り暮らしが増大し、国が考えてきたような「在宅での介護」は成り立たない。また、交通弱者が増大するため、歩いて暮らせる交通体系が求められる。空き家、空き地の増大。幽霊マンションも増加。相続をしていない、所有者不明の土地も増えている。このため、人口が低密度化することで、都市の維持コストも増大し、都市の経営・財政が困窮する。都市が生き残るためには①まちの活力を維持発展させる(産業・魅力・サービス)②コンパクト化、歩いて暮らせるまちづくり が重要となる。

 

第2講 「都市のコンパクト化をどう進めるか」

まちのコンパクト化には、中心市街地活性化は重要である。

まちなか居住の施策としての「行政による住宅供給支援事業」は、財政効率が良いか検証が必要である。

民間によるまちなか居住の取り組みとして、帯広市(ラプサム協同組合)の廃業となったビジネスホテルを食事付き賃貸住宅や、千代田区神田のNPO法人都市住宅とまちづくり研究会によるコーポラティブ住宅の事例を紹介。

空き家・空き地への取り組み、「空き家バンク」や富山市の岩瀬まちづくり㈱で建物の保存修復、活用を行っている。路線価の1/3で購入し、路線価の1/2で借地。長野市の有限責任事業組合ボンクラでは、空き家めぐりツアーし、希望者の要望を取り入れたリノベーションを行い、修繕費用を家賃から徴収する。大家は不動産に価値ができる。

住み替えで家を有効活用、移住住み替え支援機構を活用し、高齢者が自宅を売却することなく住み替えや老後の資金として活用することが可能。

歩いて暮らせるまちづくりでは、公共交通と自転車活用が柱である。

国の政策動向は、都市のコンパクト化を促進する施策、中心市街地活性化法の改正が計画されている。都市機能誘導区域、居住誘導区域を設定するもので、立地適正化計画を市町村が立てる、包括的なマスタープランを作成することが求められる。

都市機能立地支援事業制度(地方公共団体の応分負担なしに民間事業者に直接支援)もポイントである。

 

第3講義 「都市の魅力をどのように高めるか」

魅力が無ければ、経済が衰退する。まちに魅力が無ければコンパクトにはならない。誰にとっての魅力か?①地元の人②観光客「住んで良し、訪れて良しのまちづくり」である。

外貨獲得の主要は観光政策。中心市街地は便利で安全かもしれないが、現在は多くの地域が、夜楽しむ場所がなく楽しくない。都市の観光的な魅力とは、街なみ景色・食べ物・歴史文化があることである。

まちづくりを進めるために、地域の人材が重要。欧米では都市計画、まちづくりを義務教育で行い、市民やNPOを育てている。自治体の職員の見聞、知識を高めることも必要。 更に、外部専門家を活用することが求められる。

 

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