8月4日、5日 東京八重洲で開催された地方議員研究会に参加しました。
教育改革は家庭教育支援から切り込め
「家庭教育支援行政の実際」
講師:水野達朗 一般社団法人家庭教育支援センターペアレンツキャンプ 代表理事
家庭教育支援のメソッドは、保護者がカウンセリングの手法を活用することである。
多くの場合は、不登校は心が満たされるまで待ちましょうとされているが、多くは積極的に戻してあげたほうがよい。そもそも家庭教育とは、教育基本法第10条に、保護者が子どもの教育について第一義的責任を有し、国や地方公共団体が家庭教育支援に努めるべきことと規定されており、子どもの自立を家庭で育むものである。
現在の行政における家庭教育支援は、ニーズをつかみ切れていない。
半数以上が家庭の教育力が低下していると感じており(香川県家庭教育状況調査)、躾の不足や不安を半数が感じている。でも、コミュニケーションは取れていると感じているとのアンケート等から、家庭でのコミュニケーションの内容や形態に問題があることが示唆されている。過保護なのか?過干渉なのか?分からなくなっているのである。以外に小学校1年生の不登校がある。その多くは、過保護・過干渉のため、怖い学校よりなんでもしてくれる家庭が良いというケースである。
これらの背景から、自治体における家庭教育支援の規範として、家庭教育支援条例が発布され始めている。(平成25年くまもと家庭教育支援条例)しかし、公的支援では市民のニーズが相談にあるのか?解決にあるのか?を紐解く必要がある。
日本の不登校支援の成り立ちは、平成4年の適応指導教室を中心とした来談者中心療法のカウンセリングが中心(待ちましょう)とされてきた。平成10年、不登校は心の成長の助走期ととらえ、ゆとりをもって対応しようとなっている。平成13年にはスクールカウンセラーの活用が始まり、拡充が進んでいる。その後、学校の柔軟な対応や連携ネットワークの整備など、不登校支援の機能は強化されているものの、「待ちましょう」対応は変わっていない。保護者が求めているのは、抜本的な解決なのである。
不登校の現状は、小学校が3万人、中学校10万人とされているが、実際(別室登校などを含めると)はその5倍ぐらいはあるのではないか?地域での現状把握が必要である。注意すべきは、どこにも相談・指導を受けなかった生徒が30%も存在している(そもそもやる気のない親の存在)ことである。中学校での家庭教育施セミナーの意識づけ、中間層も取り込んでいく手法も必要である。また、不登校生徒の進学は67%、高校ではそのうち60%が無事卒業。平成11年度調査を行った不登校生徒の22.8%がニート・ひきこもり状態にある。これは大きな問題である。解決の出口が、見かけの不登校数減少や進学率の向上ではなく、「社会(仕事に従事)」であるなら、もっと早くから家庭教育支援の改革が必要ではないか。対処療法的ではない未然予防という考え方、家庭教育支援が必要なのである。
学校・先生の立場を家庭(保護者)が下げている現状がある。公的支援の相談窓口が複雑な上に、不登校の対応は教育部局、アウトリーチは福祉部局といったように、縦割りの障壁があり、円滑なサービスが提供できていない。だから、中間支援の存在の重要性が高まっている。
教育予算全体の中で自治体独自にできる割合が5%。実際に家庭教育支援に向けられるのは1%にも満たない。現状の教育予算を詳しく見て、既存事業の圧縮、無駄を省くこと。また、時限的な予算(耐震化やICT導入など)の切れ目が狙い目である。更に、国の補助金を利用することも有効な手段。文科省の家庭教育支援における訪問型アウトリーチ支援事業などがあった。そして、地域資源(ボランティアや民間団体、NPO)をうまく活用できているか見る必要がある。家庭教育支援をチェックするには、運営体制はきちんと整えられているか?乳幼児支援に留まっていないか?を注視する必要がある。不登校に対する公的支援は、長期欠席者全体を考えた支援が行われているか?病気と判断されている場合は保健・福祉部局に引き継がれフォローされなければならない。また、義務教育後の支援、引き込もり支援や就業支援と連携が取れているか?注視する必要がある。
家庭教育支援行政の問題点は、①窓口が猥雑であること。佐賀県武雄市の窓口一本化などの例もある。子育て支援センターの窓口への一本化と情報共有し、教育支援センターは実際の支援活動と人材研修に特化させる。さらに学校・医療機関・民間機関との連携強化していくことが求められる。②縦割り行政の問題点を改善するために、地域協議会での連携や、要保護児童対策地域協議会を活用すること、コーディネーターを中心とした新しい枠組みの構築、相談窓口を教育委員会か保健福祉局のどちらかに一元化する、放課後児童クラブと地域子ども教室など競合する支援の連携・一元化などが上げられる。③セミナーサロンの在り様自体が、時代の要請に応えていない。改善策、新しい家庭教育支援のカタチの検討。電話やメール、アウトリーチなど。SNSやLINE等の活用も検討してみては。
「地域資源を活用した新しい家庭教育支援のカタチ」
最近のニュースで、教職員の平均年齢が低下、教員の多忙改善、外部人材(チーム学校)の活用を目指す(中教審に諮問)報道があるなど、分業化が指向されているようである。しかし、もっと先を見込んだ地域で家庭教育支援を行うことを目指すべきではないか。
中間支援は、学校と家庭をつなぐものと思われがちですが、それに留まらず全ての機関と繋がることが求められている。子供を取り巻く環境が変化し、家庭・学校・地域が支える力が弱くなっており相互連携も図れなくなっている。その隙間を中間支援機関(塾、NPO、行政の支援チーム)が埋めている。過渡期として、中間支援機関に期待するのはやむを得ない。しかし、先ず力を取り戻すのは家庭教育支援である。学校・先生の立場を下げているのは家庭なのであるから。
現在抱えている問題点は、家庭教育の情報不足・情報過多である。特に情報過多が問題。家庭では、混乱して何をしていいか分からなくなっている。家庭の孤立化は危機的状況にある。これを阻止するために家庭教育支援チームが活躍するべきである。何もしない事が最大のリスクであるという認識が必要である。
家庭教育支援チームの役割は、①保護者への寄り添い支援②家庭と地域とのつながり支援③家庭と学校など関係機関とのつながり支援とされている。家庭への訪問型支援を通じて、地域の立場から学校での子供の状況を家庭に伝え、両者をつげている。
その求められる機能は①当事者性、②地域性、③専門性であり、違う属性の支援・機能が必要な為、チームでの支援が必要である。
具体的に求められる機能として
① 保護者への情報や学びの場の提供
② 家庭と地域とのつながりの場の提供、サロンも有効活用(保護者が参加しやすい企画をマネジメントすることが重要)
③ 訪問型家庭教育支援(アウトリーチ)
現状の体制は、家庭教育支援を担当する職員が配属されていない。チームの組織化(人材育成)、中心となる存在(ファシリテータ)の養成が重要。また、法的根拠からチームの拠点が重要である。武雄市の家庭教育支援チームの成功例は、行政の財政的支援がカギ。
家庭教育支援の支援モデルイメージが重要で、関心が高い保護者から低い保護者までを、支援機能を有効的に活用し、移行・循環させることがポイントである。
家庭教育支援チームの組織化マニュアルが重要。その組織化は①基本的な組織体制の構築②相談業務や訪問型支援を行う場合のルール作り③包括的なネットワークの構築という3つの段階を経て進められていく。その上で、地域に中心となる存在(ファシリテーター)の養成が重要である。その家庭教育支援チームにおける人材養成には、①地域密着型②チーム型③循環型がある。