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明日への一歩

2017年2月15日水曜日

「政策議会」について学ぶ


主催:㈱地方議会総合研究所
2017.2.15 京都テルサ:
師:土山 希美枝 龍谷大学教授

「政策議会」と市民参加 議会改革の「めざすところ」をとらえる
 事業が市民に対し信託するアウトプットである。議会のコミットが求められているはず。
            
1.政策・制度と自治体
(1) 市民と社会とのネットワーク
 暮らしに身近な取り組み(事業)は政策と制度によって成り立っている。課題状況を何かの目的をもって手段を設定する=政策(policy)。その政策の担い手は多様化し密接に絡み合っている。
(2) 都市型社会の「市民の政府」自治体の役割
 市民に必要不可欠な政策を整備する。自治体政策の最小単位は事業である。
2.政策議会とは何か
(1) 信託の実体としての政策・制度=自治体が行っている事業をより良くすること。
何が「必要不可欠」なのか、効果的なのか正解がないため「議論」で「決断」するしかない。「政策議会」とは市民により良い政策であるべく制御する主体である。
(2) 議会の機能=多様な意見を公開のヒロバで議論し、集約し決定する。内容と手続きの正当性と公開性が重要で、それを見える化できるのが議会である。監査機能と政策立案機能。
(3) 二元代表制「議会だからできること」
課題は無限であり、資源は有限である。複数の選択肢の中から議会が決断する。
2000年の分権改革で議会の監査・監視の範囲が広がった(基幹委任事業)。
3.「政策議会」の議会力を発揮する
(1)  議会改革の「本筋」=議論*(参加+情報公開)。
議会の5課題①政治争点の集約・公開②政治情報の整理・公開③政治家の選択・訓練④行政機構の監視⑤政策の提起・決定・評価
   議会はチームになれるかが重要。議会力=(議員力の総和)*x
(2)  議論はなぜ盛り上がり、なぜ盛り上がらないのか。事実という「情報」を共有し、「争点」に対する異なる意見を集約する「必要とヨロコビ」ある議会になる。
(3)  「争点」と「機会」をデザインする。
4.政策議会の市民参加
(1)  議会報告会と意見交換会、心が折れない「議会報告会」=報告から対話へ:目的と価値観を転換する。「争点」と「機会」のデザイン
(2)  政策議会の市民参加
 争点を議論する多様な手法、ワークショップ、ワールドカフェ、沖縄式(課題共有型)地域円卓会議 (CiNi)。発話のハードルを下げる(アイスブレイク)。
 岐阜県御嵩町・議会住民懇談会での問いかけ。どの案を選択するかだけを聞くのではない。
5.自治体議会の再構築 「もやい直し」のために
議会報告会から意見交換会への転換が必要である。参加人数を目標にするのではなく、参加者の満足度を問うべきである。その為には意見を吸い上げる「発話」の機会をつくる機構が求められる。全体的な説明ではなく争点を絞って行うことも必要。告知の方法を多様化。
先進事例:熟議、市民相談会(三田市)。議決権は拘束されない規定。政策をめぐって議論、議会の在り方をめぐって議論をはじめる。


「質問力でになう「政策議会」~一般質問の機能を発揮させる~」

1.たかが一般質問、されど一般質問
 標準市議会規則62条に「質問することができる」と規定、地方自治法には記載がない。
 議員は市民の生活課題を解決するために、選挙を経て議会に出てきているはず。その議員個人の政策的な関心や我が町の政策に対し、質すことができる場が一般質問である。それは、市政に対する監査機能や政策提案機能を果たす重要な機会である。
2.一般質問のしくみと機能
(1)  監査機能:行政がなすべきことを適切になしているかをチェックする。「こうあるべきだ」との方向性を示し質す。
(2)  政策提案機能:効果の検証や手法の評価・提案、とりあげられるべき施宇作課題を提起する。
(3)  一問一答かどうかよりも、持ち時間、再質問の回数、答弁調整の濃度が重要。問題意識が擦り合わないと議論が嚙み合わない。
3.一般質問が持つ課題の現状と背景
(1)  残念な・もったいない質問:窓口質問、論点を盛り込みすぎ、個別的すぎる、合理的な根拠や論拠のない、国や県の政策や事業で自治体が感知できない
(2)  無謬の行政という幻想:執行機関のメンツを潰すことになっている。議会と執行部が相互依存関係にある。議会不要論につながる。
4.機能する一般質問のために
(1)  論点整理:質問と目的の確認(なんの為に問いただすのか)
 論点は事実と意見、意見は分析と主張により構成されている。事実の共有が重要。最低限その質問で聞き出すことを確認する。
 監査機能を果たすための準備:制度や状況の整理・確認。
 政策機能を果たすため:他の課題に優先して対応すべき正当性、実現可能性を形にする。
(2)  情報収集
 現場で困っている市民生活の現場、それに対応する行政の現場、聴くことと聴く力の重要性。①基礎争点情報、レファレンス共同データベース、国立国会図書館②基礎情報elen③専門情報 CiNii、図書館収蔵文献情報
(3)  答弁調整は何が問題なのかが伝わり応答が噛み合わない事態は避ける。
  分かり易く15歳にでも分かるものとする。
5.政策議会の資源としての一般質問
いい質問をしても制度にいかされない=議員ひとりぼっちにしない。
複数の議員が同じテーマについて異なる論点や視点で質問を行う(議員間連携)。追加関連質問(尼崎市)、追跡質問。
議員質問の中から議会としてとりあげ、委員会の所管事務調査とする。委員会で協議して、とりまとめ、全員協議会で議決する。
先進事例①北海道美幌町は、全員協議会の3分の2で首長に提言。一定期間を得て報告をさせる。②芽室町は、自由討議時に一般質問のその後を追跡し、議会だよりで知らせる。③会津若松、多治見 議運で質問調整。④福岡県田川市「検討します」答弁についてその状況報告をさせる追跡型。

質問に対する追加資料をA4表裏で作成し配布したり、パワーポイント見て分かる資料・通告書にすることも考えられる。

2017年2月13日月曜日

政務活動報告:第19期自治政策特別講座「予算議会に備える」

19期自治政策特別講座
「予算議会に備える」 2017.2.22.3 神奈川県民ホール

1講義「自治体の長期ビジョン策定と議会の役割」
     総合的な計画審議のあり方 
     牛山 久仁彦 明治大学政治経済学部 教授

総合計画(自治体の長期戦略が明らかにされる)に議会がどのように関わるのか?が問われる。地方自治では地域の課題を解決する使命がある。分権一括法では、法定受託事務であっても議会で審議して良くなった。(1条第2①項「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。(設置義務)」)しかし現場では今でも国の縦割り行政の慣習のなかで、総合的ではない。
 自治体政治は共和主義(住民が直接選択する)である。「二元的代表民主制=機関競争型」
自治体の計画=自治体の将来を計画する(総合計画から各分野計画)。そのため、議会の関与が重要である。

2講義「改正された介護保険制度―予算審議の焦点は」
    鏡 諭 淑徳大学コミュニティ政策学部 教授

介護保険制度とは介護福祉制度ではない。給付と負担のバランスをどうするかが重要である。給付の縮減と負担増のトレンドの環境下で、狭間を女性や退職後の高齢者の活用により埋める「地域包括ケア」が求められている。
保健制度は、保険料を納めることによってサービスを受ける権利を得る(普遍的な制度)ことであり、福祉制度は限定的なものである。保健者7700万人に対し、利用者が605万人。92%が負担のみの状態であることを認識しなければならない。
年間10万人の介護離職者が生まれ、290万人が働きながら介護をしているなかで、給付水準が削られると、更なる離職者増がもたらされる。介護保険の改正(2015年第6期)によりサービスを見直し、地域で頑張れ!と言っている。
 総合事業の実情は、事業者が負担増。多様な主体は15.5%で低調。地域支援事業も給付管理をしないといけないので大変。課題は、報酬や委託料の払い方、実施指導や事務監査、個別サービスの金額等の項目等を要綱で対応しているが、条例化する必要がある。更に、利用者への不安解消のためには、権利関係を明確化する必要がある。
2018年改正をむけた議論では、「給付を少なくする。社会増の6400億円を5000億円に圧縮する」方向性が示されている。これにより、介護報酬だけで生活援助が賄えなくなるなかで、自治体間格差が生まれる。要介護1,2のスタートは認知症。ここにボランティアが関わることが本当に大丈夫なのか。社協や直営のサービスが求められることが予見される。

3講義「再生可能エネルギーの地域経済効果―地域継続可能性の確保とは」
    倉坂秀史 千葉大学大学院人文社会科学研究科 教授

持続可能性を巡る状況、人口減少・高齢化のインパクトが激大。これにより社会インフラの更新が困難になる。一人当たりの維持経費における地域間格差が広がる。人口が減ることによってインフラは花火のように薄くなって消えていく。人工林を維持するには60万人必要(現在5万人)。人口減少下で各種資本基盤をいかに維持更新する、費用を生み出すのか、ストックを戦略的に削減していくのかが求められる。
資本基盤管理原則、閾値がある。踏み越えないように手入れする必要がある。
産業、域外に顧客を持ち外部から域内に収入をもたらす産業(成長部門)と資本基盤の手入れを行う持続部門。自治体はこの持続部門を支えなければならない。
産業構造シミュレーターにより将来の想定をして対応を図る。中高生による「未来ワークショップ」の開催(やちよ未来ワークショップ=125万円で)。
エネルギー、排熱を徹底的に排除する分散的エネルギー供給構造に変わる必要がある。
ダイナミックプライシング、電力需給を把握できる次世代電力系(スマートメーター)の設置により実現(2020年代)。都市計画の中でエネルギー供給を位置づける。熱電管の設置やトランスヒートコンテナなどを計画(岩手県紫波町オガールタウン)。
これまで域外に支出をしていたエネルギーを取り戻せる(21万円/世帯)。再生可能エネルギーは地方創生のカギである。(群馬県中之庄町、岩手県住田町、真庭市等、飯田市の再エネ自治体条例を参考)。http://kurasaka.world.coocan.jp/ 参照
持続期の経済社会での経済指標は、人口資本、自然資本、人的資本、社会関係資本。
フローマネジメントよりもストックマネジメント。
 

4講義「わかりやすい公会計の基礎―公会計の発祥と現状」
    亀井孝文 元 南山大学総合政策学部 教授

法体系はフランス式、カメラル簿記(ドイツ)=予算と執行額を一つにまとめる を採用。
現行制度の問題点、現金と物が一致しない。会計区分、一般会計(共通の財政)。現金主義・発生主義(几帳時の確定時の価値計算)、実態は現金収支会計である。
予算に対する決算の取り扱いが軽視されている。
予算編成時にはフルコストで編成すべき。減価償却と建設公債主義の溝がある。
前年度予算編成時に単コロがあったのかどうかチェックする。出納整理期間の問題。
地方公監査=アングロサクソン系(保障型監査)

5講義「自治体ICTの意義とコスト 予算審議のチェックポイント」
    小林 隆 東海大学政治経済学部教授

基幹フレームからの脱却をしなければならない。
現代は情報・知識を誰でも手に入れられる環境となった。「最近気づいていないことに気づき」、自分の関心のある経験による検索(外部参照系)と外部入力系による気づき(入力系)の両方が必要。これにより不確実性の低減が図られる。
ネットワークの3つの性質 ・クラスター性・スモールワールド性・スケールフリー性、クラスターを守りつつ適度なスケールフリー(成長)性を発揮させる 性質がある。
日本の地方を観ればこれから起こることが予見できる。そのために情報自治のためのシステムを活用する必要がある。
自治体ICTとセキュリティ、メーガン法から考えるべきことは、必要性を社会が認めたならば、プライバシーに関わる個人の利益、不利益の発生を予見しながら個人情報を提供する範囲を明文化して運用するしかない。
効率性のシステム予算より、負の分配に備える予算にしなければならない。