「水は低きに就くが如し」との孟子の言葉ではありませんが、大規模な災害時ほど立場の弱い人に被害が集まることが繰り返されています。平成16年に発生した風水害で高齢者が多く犠牲になったことを契機に、災害時要援護者名簿の作成や避難支援の取り組み方針の策定などの対策が進められてきました。しかし、その後の東日本大震災などの災害時でも要配慮者への支援が十分に行き届かなかったことを受け、平成25年6月に災害対策基本法の一部改正を行い、高齢者、障害者、乳幼児等の防災施策において特に配慮を要する方のうち、災害発生時の避難等に特に支援を要する方の名簿の作成を義務付けること等が規定されました。
本市においても、災害時要援護者支援制度を設け、コミュニティ協議会、自治会、民生・児童委員・地区社会福祉協議会、自主防災組織、避難支援者など地域と市、防災関係機関が連携して「災害時要援護者台帳の登録」などその対策を推し進めて参りました。しかし、現状ではその目的が果たされているとは言えません。平成28年台風10号による水害で、岩手県岩泉町のグループホームが被災し入所者9名が全員亡くなったことを重く受けとめ、高齢者等が避難を開始する段階であるということを明確にするため、それまでの「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に名称変更が行われました。しかし、今年の18号台風時(市内全域に「避難準備・高齢者等避難開始」、74,967名に「避難勧告」情報が発令)に本市で避難所に実際に避難した人は僅か191名です。「避難準備・高齢者等避難開始」が出された折に、果たしてどれだけの要援護者に対し「声掛け」が行われたのでしょうか。
私は地域コミュニティ協議会の防災部会長を引き受け、国や市が目指している防災事業が実際に地域で実現できるよう取り組んでいます。昨年度の校区での訓練から、避難所開設マニュアルの整備と、その手順に沿った訓練を行いました。今年度の訓練では、より実践的な修正を加えることと、この要援護者への連絡体制の構築を大きなテーマとして取り組んで参りました。しかし、この要援護者台帳の登録・更新、そして避難を行うためには、もちろん本人家族だけでは行えず、自治会や自主防災会、民生委員などが連携協力を行い、地域が一体となって取り組まなければ出来ないのですが、あるべき姿・想いと現場とには大きな開きがあり、粘り強く取り組まなければ出来ないと感じています。
本市では、災害時要援護者台帳の登録は健康福祉総務課が、地域での防災体制の構築は消防局予防課が、災害時全般を危機管理課が担っておりますが、一体となった明確な目標と、実現までの工程表を明確にしなければ、大規模災害時の被害を減少させるという目的は果たせません。本市の「市民及び地域の防災意識と防災力の向上」の事務事業のひとつが「地域防災対策事業」となっております。成果指標として「地域防災リーダー養成セミナー受講者数」を掲げておりますが、私はここに「災害時要援護者支援体制の構築」を目標に掲げ、早期に「避難準備・高齢者等避難開始」情報が発令されたときには、全ての要援護者に対して「声掛け」が行われる体制の構築を行うとするなど、具体的な成果指標を設け、推し進めることが必要なのではないかと考えます。
そこで早期に災害時要援護者支援体制を構築することを強く求めました。
大西市長の答弁
ご指摘のように多くの地域においては支援者や支援団体が明確に決められていないため、災害時要援護者、個人に対する非難の呼びかけや安否確認などの支援にまでには具体的に至っていない状況で、関係団体間の連携など解決すべき課題がある。
私は災害時要援護者への支援対策は大変重要な取り組みと認識しており、今後、地域コミュニティ協議会や自治会などからも状況を確認した上で、これらの課題を確実に解決できるよう、支援体制について検討したい。
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